斜面を下りる物体・・・質量が大きくなっても 斜面下の速度は変わらない.
さらには、滑り降りている間の加速度も、到達するまでの時間も変わらないんですね。
エネルギー保存から考えると、重たいもののほうが位置エネルギーが大きいので、斜面下の速度が速くなりそうな気もします。混乱しそうですね。
しかし高校知識から言うと、運動エネルギー項にも位置エネルギー項にも質量mが一次で入っているので
等式上では消えてしまい、最終速さは重力加速度と高さのみで決まってしまいます。
中学生の皆さんにはエネルギー保存からのアプローチはやめて、運動方程式の視点から考えて見ます。
「ものを押すとだんだん速くなっていく。」
「強く押せはあっという間に速くなる」
「重たいものほどうごかすのが大変」
これを式で書くと以下のようにかけます。
F=ma (運動方程式)
もうすこし詳しく言えば、
力Fを質量mの物体に及ぼすと加速度aで動く。
質量mは加速のしにくさをあらわす比例定数。
ということです。
物体の質量mが大きくなっても、斜面を滑り降りる加速度a(単位時間あたりの速度の増え方)が一定であれば、当然最終速度も物体の質量に関係なく同じになります。そのためには物体を押す力も大きくしないといけません。
【なぜ加速度が一定なのかという疑問】斜面の角度が90度の斜面を用意します。つまり真下におとして見ましょう。
よくありますよね。パチンコ玉、ビー玉、ピンポン玉、スチロール球、ビーズ、一緒に落としたら(空気抵抗は無視)
どれが一番速く床に到達するか?という問題が。じつは一緒に床に到着するのですね。
物体が落ちるのは物体が下方向に地球から引っ張られるのですが、その引っ張る力が物体のもつ質量に比例するので
重たいものほどずっしりと感じられます。ここまで見ると重たいものの方が早く地面に到達しそうですが、実は
その力によって何を引っ張るか?ということの視点が抜けていることが多いです。
いくら引っ張る(落ちる)力が大きくなっても、その分引っ張”られる”ものが重たくなれば、加速はしにくくなりますね。
一旦横方向で考えて見ましょう。
地面を水平に走る車を考えたとき、重たいトラックには馬力のあるエンジンを、軽自動車には小さいエンジンを乗せます。
それで大体同じ加速度で路上を走行することが出来ます。
いくらハイパワーなエンジンを搭載していても、車の質量が大きすぎたら加速するのは大変です。
「地球上にかかわらす月でもそうですが、質量に比例して(比例定数はg重力加速度)落ちる力が決まる」ので、
重たいものほど力は大きくかかりますが、動かされる側の物質も重たくなっているので動きにくくなっているということです。
逆に、「神様は加速度を一定にするように物体に力を与える。質量が大きいもの(うごかしにくいもの)にはたくさん、質量が小さいもの(うごかしやすいもの)には少しに力を与える」という言い方もできますね。
式で考えれば、
運動方程式は、「力は質量と加速度の積」ということですから
F=ma (式1) Fとaは比例、Fとmは比例。
地球上で質量mにかかる重力は、地球上の重力加速度をgとすると、式1より
重力=mgともとまる。(式1は重力を求めるために用いた)
この重力を運動方程式の
左辺(力の項)において、質量mにどれだけの加速度が生じるかを求めるために再度式1を使います。
、求めたい未知数はa
mg=ma
よってg=a
両辺mで割って、質量は消えてしまいます。
質量mの加速度はgと求まりました。
まあ、ひよこが先が鶏が先か?のような感じで堂々巡り感覚がありますね。
地球上で物体を落とす限り加速度は物によらずg(一定)です。
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仮想実験
鳥の羽などはゆっくり落ちるのは空気抵抗のせいですが、
「体験上は軽いものが遅く落ちる」につながる原因かと
思います。真空では羽毛でさえストンと落ちます。
仮想実験:
パチンコ玉をABC3つ用意します。
Aは単独に、BとCはの2個は0.1ミリメートルだけ離して近接させます。
同じ高さからいっせいに落とします。
ABCは同時に床に到達します。
次にBとCの隙間に液体状のアロンアルファーをたらして、Aとともに一斉に落とします。
液体は力をつたえませんから、接着剤が乾かないうちは3玉とも同じ落ち方をしますが
瞬間接着剤が固まった瞬間BC一体化し質量が2倍の一つの物質になるので
重くなった。だからその瞬間から落ちるスピードが2倍速くなる。
この現象は無いですよね。
いかがでしょうか?雰囲気が伝わりましたでしょうか?
繰り返しになりますが、
「質量の大きいものにかかる力は大きいですが、そのちからによって動かされるものの質量も大きいのでうごきにくい」と言うことです。
斜面の場合であっても斜面に沿った方向(物体が落ちる方向)については同じことが言えます。